相続コラムvol.40「家族信託と損益通算」
◯損益通算とは?
損益通算とは、一定の所得においてマイナスが生じていた場合、他の所得からマイナス分を差し引くことをいいます。
例えば、不動産所得が△200万円、事業所得が300万円であった場合、 事業所得300万円から不動産所得200万円を差し引くことをいいます。これにより合計所得は100万円となり、所得税の課税対象は100万円となります。
所得税の金額の計算上損失が生じた場合に、損益通算の対象となる所得は次の所得です。
- 不動産所得
- 事業所得
- 譲渡所得
- 山林所得
◯家族信託では損益通算ができない?
家族信託は非常に便利な制度ですが、税務上、注意点があります。
その一つが、所得税の計算上損益通算ができない、ということです。
これは、 租税特別措置法41条の4の2(特定組合員等の不動産所得に係る損益通算等の特例)という法律で、信託から生じた不動産所得の損失については、生じなかったものとみなされ、他の不動産所得の黒字から差し引くことができない、とされているからです。
具体的には
- 信託財産とした不動産から生じた損失を、信託財産以外から生じた所得と損益通算することはできなくなります。
- 「損失については生じなかったもの」となりますので、純損失の繰越し控除を行うこともできません。
- 信託契約が複数にわたる場合(不動産ごとに別々の信託契約となっている場合)、異なる信託契約の信託不動産との損失通算はできません。同じ信託契約で信託財産とされている不動産の損失については損益通算が可能です。
ということになります。
大規模修繕の予定がある不動産を信託する際などは特に注意が必要となります。
家族信託は相続や成年後見など法的な検討事項が多いので、法律の専門家である司法書士や弁護士の先生に相談することが多いと思いますが、税務面のチェックを税理士にしておくことも重要です。
◯ 認知症になる前に対策を
残念ながらご家族が既に認知症になってからでは有効な家族信託も、利用することができません。家族信託=「契約」によって開始するからです。判断能力がない状態で契約したとしても契約は無効となってしまいますので、家族信託も無効になってしまいます。
認知症対策をはじめとする生前対策は「元気なうち」にしかすることができません。
早めの対策が必須です。
この記事を担当した税理士
税理士法人葵パートナーズ
代表社員税理士
花田 直子
- 保有資格
税理士
- 経歴
-
2002年に税理士試験合格。
2011年より税理士法人葵パートナーズの代表社員税理士を務める。
相続の相談件数1,800件以上の経験から相続税を中心とした相続に関する悩みを抱えている相談者からの信頼も厚い。
- 2024年7月25日「一度相談に行ってみてください。親切に教えてくださいます」
- ご相談内容:相続手続き 満足度:とても満足 1.当事務所にご相談にいらしたきっかけを教えてください。 昨年、安島事務所から紹介されて、今回もお願いしました。 2.当事務所のサービスを受けた感想…
- 2024年5月15日「手際よく対応してくださいました」
- ご相談内容:相続税申告 満足度:満足 1.当事務所にご相談にいらしたきっかけを教えてください。 司法書士さんの紹介です。 2.当事務所のサービスを受けた感想はいかがでしたか? 手際よく対応し…
- 2024年3月25日「親切で話しやすく合理的」
- ご相談内容: 満足度:とても満足 1.当事務所にご相談にいらしたきっかけを教えてください。 相続の相談でパソコンで検索して決めました。 2.当事務所のサービスを受けた感想はいかがでしたか? …
- 2023年8月24日「丁寧な仕事で感謝しています。」
- ご相談内容:相続税申告、相続手続き 満足度:とても満足 1.当事務所にご相談にいらしたきっかけを教えてください。 司法書士さんの紹介 2.当事務所のサービスを受けた感想はいかがでしたか? 丁…